登山のコースタイムはどう決まる?計画から下山までの数字の読み方

A happy couple in a forest using a map to navigate during their outdoor adventure. Uncategorized
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コースタイムという数字は、そもそも何を表しているのか

登山地図や登山ガイドに書かれている「コースタイム」は、誰が歩いても同じ時間になるという意味の数字ではありません。標準的な体力を持つ登山者が、休憩を挟まずに歩き続けた場合の目安時間です。つまり最初から「休憩は別枠」という前提でできています。

この前提を知らずに使うと、思わぬ計算違いが起こります。地図に「3時間」と書いてあれば、多くの人はそのまま3時間で山頂に着くと考えます。しかし実際には、水を飲む、写真を撮る、道を確認する、こうした時間は含まれていません。休憩を2回、合計30分取れば、その時点で計画は3時間半になります。

たとえば標高差700メートル、コースタイム3時間の登山道を想像してみてください。朝8時に登り始めて、休憩なしなら11時に山頂です。でも実際には8時に出発して、9時半に10分休み、10時半にまた10分休み、山頂到着は11時20分になる。これはコースタイムが間違っているのではなく、そもそもコースタイムが「歩行時間だけ」を測る数字だからです。

ただし例外もあります。近年整備されたばかりの登山道や、逆に荒れて久しい道では、実際の所要時間が地図の数字と大きくずれることがあります。地図の改訂年を確認する癖をつけておくと、この誤差にも気づきやすくなります。

その数字はどうやって作られているのか

コースタイムは、地図会社や自治体、山岳会などが実際にそのルートを歩いて計測し、一定のモデル歩行速度に当てはめて算出しています。感覚や思いつきで書かれた数字ではありません。ただし、そのモデルが「誰を基準にしているか」は、地図によって少しずつ違います。

一般的には、平地で時速4キロ程度、登りでは標高差300メートルを1時間程度で登るという速度が基準にされることが多いようです。ここに、荷物の重さや道の状態による補正が加わります。急な岩場が続く区間は同じ距離でも時間が長く設定されますし、なだらかな尾根道なら短く設定されます。

具体的な場面で考えてみましょう。ある地図で「登り2時間、下り1時間20分」と書かれた区間があったとします。この数字は、体力もペースも標準的な登山者が、日帰り装備程度の荷物を背負って歩いた実測値をもとにしています。テント泊装備で10キロ以上重い荷物を背負っていれば、この数字はそのまま当てはまりません。

迷いやすいのは、地図によって基準となる歩行速度が微妙に違う点です。同じ山でも、A社の地図とB社の地図でコースタイムが20分ほど違うことがあります。どちらかが間違っているわけではなく、モデルにした登山者像が違うだけです。複数の地図を持っている人は、この差を「誤差の範囲」として受け止めておくとよいでしょう。

歩いている途中で、数字と実際がずれていく理由

計画段階で立てた時間と、実際に歩いている最中の時間は、多くの場合ずれていきます。これは失敗ではなく、コースタイムという数字の性質上、当然に起こることです。ずれの主な原因は、休憩時間、荷物の重さ、そして天候の三つです。

休憩についてはすでに触れた通りです。加えて、荷物が重いと歩行速度そのものが落ちます。日帰り用の軽い荷物を想定したコースタイムに対して、テント泊装備を背負って歩けば、同じ区間でも1割から2割ほど時間がかかることは珍しくありません。天候が悪ければ、足元を確認しながら慎重に歩くため、さらに時間がかかります。

具体的には、コースタイム4時間の縦走路を、15キロのザックを背負って歩いたケースを考えてみます。晴天であれば4時間半程度で歩けたとしても、雨で岩場が滑りやすくなっていれば、同じ区間に5時間半かかることもあります。地図の数字だけを信じて日没時刻から逆算していると、この1時間の差が、下山が暗くなるかどうかの分かれ目になります。

ここは経験によって差が出やすいところで、正直なところ一律の目安を示すのは難しい部分です。体力に自信がある人はコースタイムより短く歩けることもありますが、慣れないうちは「コースタイムより遅くなる」を基本にして計画を立てておくほうが安全です。

下山のときの数字は、登りとは違う読み方が要る

下りのコースタイムは登りより短く設定されていることがほとんどです。しかし、下りが必ず楽で速いとは限りません。むしろ疲労が蓄積した状態で歩く下りは、地図の数字より時間がかかることがよくあります。

理由は単純です。コースタイムは歩行そのものの負荷を基準にしていますが、疲労の蓄積までは細かく反映されていません。登りで体力を使い切った状態で下り始めると、足元がふらつき、休憩も増えます。膝への負担を考えて慎重に下る人ほど、地図の数字より遅くなる傾向があります。

たとえば往復コースタイム合計7時間の山で、登りに計画通り3時間半かかったとします。多くの人は「下りは登りより速いはずだから、3時間もかからないだろう」と考えがちです。しかし実際には、疲れた脚で3時間半の下りコースタイムをそのまま消化し、結果として往復8時間近くかかることもあります。日没時刻を基準に下山時刻を計画するなら、この「下りは楽」という思い込みは外しておいたほうが安全です。

例外として、走るように下山できる健脚の人や、下りに慣れたトレイルランナーであれば、コースタイムより大幅に短く歩けることもあります。ただしこれは個人差が大きい部分で、初めてのコースでは当てはめない方が無難です。

計画に落とし込むときの、数字との付き合い方

コースタイムをそのまま計画に使うのではなく、自分なりの係数をかけて読み替えることが、行程を安全に組む上での基本になります。目安としてよく言われるのは、コースタイム全体に1.2倍から1.5倍程度をかけて予定時間とする考え方です。

この係数は、休憩時間や荷物の重さ、体力、天候の見込みなどをまとめて吸収するためのものです。慣れている人ほど係数は小さくてよく、初めてのコースや荷物が重い縦走では大きめに見ておく方が安全に振れます。ここは正解が一つあるわけではなく、自分の過去の記録と照らし合わせて調整していく部分です。

具体的には、コースタイム6時間の山に日帰りで登る計画を立てるとします。係数を1.3倍とすれば、実際の所要時間の見込みは7時間48分です。朝6時に登山口を出発すれば、下山は13時48分ごろ。ここに昼食休憩30分を足せば14時20分ごろとなり、日没の2時間以上前に下山できる計画になります。この余裕分を先に確保しておくことが、計画作りの実質的な意味です。

迷いやすいのは、この係数を毎回同じ数字で固定してしまうことです。天候の良い低山日帰りと、悪天候の可能性がある縦走では、必要な余裕はまったく違います。数字を一つ覚えて安心するのではなく、状況に応じて係数を動かす柔軟さが必要です。地図の数字は出発点であって、答えそのものではありません。

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